かつて日本の基幹産業として隆盛を誇った造船業でしたが、産業構造の転換に伴い閉鎖・合理化される造船所が相次ぎました。大阪市住之江区の木津川河口、北加賀屋にあった名村造船所大阪工場もそのひとつ。敷地が土地所有者に返還され、その跡地活用を検討するにあたり既存建物を音楽・演劇等の芸術の発信基地として再活用するプロジェクトが始動しました。

まずは廃墟となった工場２階のプライベートBar。オーナーが収集した家具や書籍をデザインの一部として取り入れ、寛ぎの空間を創出しました。増設した屋外テラスの先には、ＳＦ映画さながらの工場夜景が広がります。

次は建物の最上階に船舶の原寸図を描いていたドラフティングルームが残り、非日常的な大空間の中で時の流れを感じることができる事務所棟。その下層階をコンバージョンすることで、芸術ホール・ラウンジ・ギャラリーへと生まれ変わりました。

残存物を活かして無機質で静寂感のあるデザインとすることで、舞台イベントやインスタレーションを際立たせています。改修工事で発生したコンクリート片は、積み上げられてライトアップされ、本プロジェクトを象徴するアートとなりました。

※2007年　経済産業省の「近代化産業遺産」に認定されました。

さらに、アートの展示を水上にまで展開する組立式の水上ステージ。現在では水都大阪の水上イベントで欠かせない「ラバーダック」が水面に浮かびます。